「三度目の正直」成立急げ(産経新聞「主張」・3月11日朝刊)
自民、公明の両与党が、4月29日を「昭和の日」とすることを柱とした祝日法改正案を今国会に提出する方針を決めた。法案は過去に二回、参院と衆院でそれぞれ可決しながら、もう一方の院で政局の波をかぶり廃案となっている。「三度目の正直」の今度こそ、政治のかけひき材料とすることなく成立をはかってほしい。
4月29日は、言うまでもなく昭和時代の「天皇誕生日」だった。「みどりの日」になったのは、昭和天皇の崩御の後、祝日として残すための緊急避難的な措置だった。
その後、「六十余年の長きにわたった昭和の時代の栄光と苦難をしのぶ日があるべきだ」との声が強まり、国民運動を背に「昭和の日」法案が提出されたのである。
ところが、四年前の最初の法案は先議の参院で可決されながら、与野党の対立激化のあおりで衆院段階で廃案となった。さらに昨年は、一部修正した法案が衆院で可決したにもかかわらず、継続審議となった参院では衆院解散を前にした政局激化のため審議も行われず、またも廃案となった。
今、日本が米国と戦争をしたことも、東京でオリンピックが開かれたことも知らない若者がいると言われる。自らの国や祖先たちの歴史がいかに軽んじられているかを示している。最近指摘される国家意識の希薄さや、若者のデラシネ(根なし草)現象ともつながっているといえる。
そんな時代だけに「昭和の日」は必要だといえる。年に一度だけでも親子で「昭和ってどんな時代?」「日本はどんな国?」といったことを話し合えば、自らの国への思いは変ってくるだろう。その意味で、この法律は単に祝日の名称変更だけにとどまらない重要なものである。
しかも「みどりの日」は5月4日に移すことになっており、法案に対する国民の合意はすでに得られているはずだ。事実、昨年の衆院段階では最大野党の民主党も賛成に回っている。
にもかかわらず、政局が混乱するとあっさり廃案とされたのは、国会に、こうした法案の重要性の認識が欠けていたためといわざるをえない。各党は政局のいかんにかかわらず、超党派的に成立を急ぐべきだ。